PICK UP ACTRESS 小島梨里杏

PICK UP ACTRESS 小島梨里杏

PHOTO=河野英喜 INTERVIEW=斉藤貴志

 
 

新田次郎の小説の映画化でヒロイン
主人公と恋をする明治のお嬢様役

 
 

――明治時代の日立鉱山の煙害を巡る実話を元にした映画「ある町の高い煙突」でヒロインの加屋千穂を演じてますが、おでこを全開にした髪型が目を引きました。

「あそこまで髪を上げるとは思いませんでした(笑)。時代劇とも違って、全部上げた上に盛るという、今からしたら斬新な髪型で、最初は『エッ? ちょっと恥ずかしい……』みたいな気持ちがありました(笑)」。

――首にスカーフを巻いて、西洋風の服は当時でいうハイカラかと思いますが、着心地はどうでした?

「わりと小さめに作られていて、撮影が初夏だったので、めちゃめちゃ暑かったです(笑)。でも、奇跡的に顔には汗をかかなくて、『暑くないの?』と言われてました」。

――千穂は日立鉱山で農民との交渉役を務める加屋淳平の妹で、言葉遣いが「いつも兄に叱られますの」とか「もういたしませんから」といった感じで、お嬢様のようですよね。

「良い家庭の子ですけど、原作から読ませていただいて、おてんばというか元気ハツラツな子だと思いました。しゃべり方は出来上がっていたので、その通りに話すだけで、お嬢様ということより、明るさを意識しました」。


――ああいう言葉遣いは自然に馴染んだわけですか?

「私自身はお嬢様ではないし、『ごきげんよう』とか普段は絶対言わないので(笑)、もちろん練習はしました。でも、あの衣装を着たら、なぜか自然に言えました」。

――立ち居振る舞いも、育ちの良さを特に意識しませんでした?

「それもあの衣装を着ていると、自然にそんなふうになってました。私、衣装によって変わるところがあるんです。普段もボーイッシュな格好をしたら男勝りになったりしますし、今回だと服が色鮮やかなのは一貫していて、それを着たら千穂になる感じでした。逆に、衣装を脱いで『お疲れさまでした』と言うと、『誰? あっ、千穂か』と言われてました(笑)」。

――形から入るタイプなんですかね。千穂は農民側の代表の関根三郎と淡い恋に落ちますが、しゃぼん玉を吹きかけてじゃれたり、無邪気なところも見えました。

「お兄ちゃんとの絡みで、そういう面が出ていたと思います。三郎さんと3人でピクニックみたいなことをする場面がありましたけど、兄と三郎さんはいわば仇同士じゃないですか。でも、2人ともお互いに見せる顔と、千穂に見せる顔はたぶん違っていて、千穂がお兄ちゃんを今で言う“イジる”ことで、お兄ちゃんのかわいい部分、少し抜けた部分が垣間見られると思いました。あそこのシーンは好きですね」。


――梨里杏さんはお兄さんは実際いるんでしたっけ?

「いないんです。お姉ちゃんはいますけど、お兄ちゃんが欲しかったです(笑)。勉強を教えてくれたり、遊んでもらえたらいいなと思ってました。『お兄さま』とは呼びませんけど(笑)」。

――今とは時代も違いますが、千穂には梨里杏さん自身と重なる部分はありました?

「よくよく考えると、私は人のことを信じやすくて、そこは千穂も同じだったかもしれません。疑うところから入らず、素直に人を信じられる子だと思います」。


 
 

日常はどんどん過ぎていくので
今あるものを今見ておきたいです

 
 

――さっき出た言葉遣いなどに関して、梨里杏さんはお嬢様ではないにせよ、ご家庭でしつけられたことはありませんでしたか?

「家訓みたいなものはありませんけど、お母さんが汚い言葉が嫌いで、今でいう『ヤバイ』とか『アンタ』みたいな言葉は使いませんでした。だから、いまだに『オマエさ』とか言われると、『エッ?』となります。そういう言葉が普通な家庭もあることは理解していて、私も『ヤバっ!』とか言っちゃいますけど(笑)、『人を傷つける言葉は使ったらダメ』と言われて育ちました」。

――それがお嬢様言葉が自然に口をつく一因だったのかも。明治時代の物語という部分で、気をつけたことはありますか?

「今と違って、女性が男性をより立てていた時代だったと思います。しゃべっていても、今なら仲良くなれば敬語はなくなるのに、ずっと敬語だったり。あとは人との物理的な距離感が、今より遠い。今のほうが男女でも近づきますし、連絡手段もいろいろありますよね。千穂は葉書だけで、三郎さんに近況を知らせていました。でも遠いことで、手紙で心がかえって密に通じ合う。簡単に会えないからこそ愛おしくなって、お互いがかけがえのない存在になっていくのは、千穂を通して知りました」。


――千穂は結核を患って村を離れ、茅ケ崎の病院に入院。三郎と最後に会ったシーンは、涙を誘いました。

「あそこは涙が止まりませんでした。あれほど苦しかった場面は、今までなかったかもしれません。もう一生、三郎さんと会えないと思っていた中で、遠巻きに会えて希望が差したのと同時に、これが最後だから『三郎さんを目に焼き付けておこう』という気持ちもありました」。

――あの場面の撮影は規制が敷かれて、役者さんたち以外は近づけなかったそうですが、緊張感もありました?

「ありましたね。私自身、撮影前までワーッとしゃべっていて、『用意、ハイ!』で切り替えができるタイプではないので。今回の千穂は最後に向かうほど抱えているものが大きくなるので、現場でハイテンションではいられませんでした。ずっと千穂の孤独な気持ちになっていましたけど、助監督さんが気を回してくださって、私と三郎役の井出(麻渡)さんが事前に会わないようにしてくれたんです。現場の雰囲気もいつもは和気あいあいとしていたのが、そのときばかりは静かにしていただいたり、空気をみんなで作ったように感じました」。


――撮影から1年が経って、また暑くなってきました。

「私は遠出でも近場でも、お散歩するのが好きなんですね。閑静な住宅街をブラブラ歩くだけでも楽しくて、夏になると、よりお出掛けしたい気分になります」。

――太陽が照りつける猛暑になっても?

「はい。普通に考えたらしんどいし、外に出てから『やめておけば良かった』となるにしても、それも含めて好きなんです。日本の四季って、いいじゃないですか。暑さも大切にしたいし、写真が趣味でフィルムカメラを手に入れたので、今年はいっぱい撮りたいです」。

――音楽好きとしては、ロックフェスにも行くんですか?

「行きます! 本当は暑いのは苦手で、焼けたくもないので、部屋にいたくなることもありますけど、一度きりの人生なので(笑)」。

――令和元年の夏も1回しかありません。

「本当にそうですよね。今回の映画でもありましたけど、日常はどんどん過ぎていくじゃないですか。当たり前に見えることも当たり前ではないと思いますし、今あるものは今しか見られませんからね」。


 
 


 
 

小島梨里杏(こじま・りりあ)

生年月日:1993年12月18日(25歳)
出身地:東京都

 
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2014年に特撮ドラマ「烈車戦隊トッキュウジャー」(テレビ朝日系)に出演して注目される。ドラマ「表参道高校合唱部!」(TBS系)、「朝が来る」(東海テレビ・フジテレビ系)、「子連れ信兵衛2」(NHK BSプレミアム)、「3人のパパ」(TBS系)、映画「オオカミ少女と黒王子」、「人狼ゲーム プリズン・ブレイク」、「暗黒女子」、舞台「ひびのばら」などに出演。「天才てれびくんYOU」(NHK Eテレ/月~木曜18:20~)にメインMCとして出演中。通信カラオケ配信番組「DAM CHANNEL」15代目MC。1st写真集「半透明」(玄光社)が発売中。映画「ある町の高い煙突」が6月22日(土)から全国ロードショー。
詳しい情報は公式HPへ
 
 

「ある町の高い煙突」

詳しい情報は「ある町の高い煙突」公式サイトへ
 

 

 
 

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