FRESH ACTRESS 北村優衣
PHOTO=草刈雅之 INTERVIEW=斉藤貴志
「ワイドナ高校生」などで注目の16歳
「水族館ガール」にカギとなる役で出演
――16歳の優衣さんですが、「ワイドナショー」で「大人っぽい」と評判になりました。
「昔からよく『大人っぽい』と言われてました。声も低いので、落ち着いて見られがちで。本当はそんなこともないです。学校ではもう、みんなでワキャワキャしてます。でも最近、年齢のせいか、たまについていけないときもあって(笑)」。
――やっぱり精神的に大人だからかも。
「この世界に入ってから大人の人としゃべる機会が多くなって、自分より全然たくさん人生経験されている方とお話するのは、すごく楽しいです。知識だけは大人になった気分でいます。大人になりきれてない子どもというか」。
――一番テンションが上がるのはどんなときですか?
「最近だと、YouTubeでバンドを探すことにハマっています。メジャーデビューしたてのバンドだったり、インディーズだったり。自分にハマる曲、体が動く曲を見つけたときが一番テンション上がりますね。『これヤバっ!』みたいな」。
――たとえば、どんなバンドで?
「go!go!vanillasとMy Hair is Badというバンドがすごく好きです。曲調にも歌詞にも心を惹かれて。あと、Mrs. GREEN APPLEも」。
――そういうロックを、どんな感じで聴いているんですか?
「わりと体を動かしてますね。踊れないくせに踊れているふうに踊ってたりします(笑)。部屋で1人でノリノリになって。親が来たらボリュームを下げて(笑)」。
――芸能界に入ったきっかけは2013年の事務所のオーディションとのことですが。
「幼稚園の頃から芸能界に入りたいと思っていました。親が『セーラームーン』を好きで、ミュージカルを一緒に観に行かせてもらって、『私も女優さんになるんだ』と勝手に思ってました(笑)。小学4年のとき、学校行事で『サウンド・オブ・ミュージック』の主役のマリア先生をやらせてもらったんですね。そこでひとつのことをみんなで成し遂げる楽しさと、演じる楽しさを改めて実感して。漠然と『女優さんになりたい』と思っていたのが、『絶対になる!』と決めました。女優さんになるためにはどうしたらいいのか、どんなドラマを観たらいいのかも考えるようになって」。
――さらに想いが募る作品に出会ったりも?
「中島哲也監督の映画『告白』ですね。もともと小松菜奈さんや二階堂ふみさんみたいな雰囲気のある女優さんになりたかったんですけど、中島監督の映画に合うようになれたらと思いました。でも私は根がこんなに明るくて、まだ自分の奥底にあるものを掘り出せてないので。今持っているものを活かすとしたら、明るいキャラクターをさらけ出すことかな、と思ってやっています」。
――そんな自己分析もしているんですか。
「まだ自分を自分で受け止め切れない部分があるんです。なりたい自分しか見えてなくて。もうちょっと器を広げて、自分の嫌な部分や信じたくない部分も受け入れていかないと、女優として続けていけない気がします。今が変わり目だと、すごく感じています」。
――やっぱり考え方が大人ですね。
「本当ですか? 女優は死ぬまで続けていきたいので、そういうことはちゃんと考えていこうとは思います」。
――今回出演する「水族館ガール」の主人公の松岡茉優さんも、憧れだったとか。
「はい。初めて観たのは『桐島、部活やめるってよ』でした。あのときはギャルっぽいイメージでしたけど、いろいろな役をやられているじゃないですか。お笑い番組やこの前の『27時間テレビ』ではMCをやられていたり、大河ドラマ『真田丸』にも出られたり。どれを観ても全力投球を感じます。私も何でも全力を尽くしたいので、憧れがあります」。
――優衣さんが演じたのは松岡さんの上司の娘の倉野初美。両親が離婚寸前で、お父さんに「早く離婚届け渡せよ」とか言ってますが、ああいう口の利き方を普段はします?
「あるらしいです(笑)。私、自分で気づいてなかったんですけど、反抗期みたいで。そういう口調になっていることもあるので、初美と似てる部分はあると思います。ただ、私はケンカというより、お母さんの話を無視することが多いですね(笑)。というか、お母さんが同じことを何度も聞いてくるので、一回でわかってほしくて。でも親と買い物をするのは好きで、仲良いです」。
――洗濯物を「お父さんのと一緒にしないで」とかは?
「全然。お父さんは映画をよく観ていて、洋画とかいろいろ勧めてくれるし、尊敬してます」。
――たいした反抗期でもないような……(笑)。
「明るい反抗期です(笑)。初美も家庭の事情がいろいろあって父親に反抗してますけど、自分の想いが上手に伝えられなくて、ああ出ちゃったように感じるんです。不器用なだけで、親への愛はある。どうにかしたい気持ちはあるんだと、常に意識して演じました」。
――そういうふうに考えたのも、台本を読み込んだ末に?
「それもありますけど、衣装合わせで監督さんと会って『初美の髪を明るくしようか』となって。なぜ初美は髪を明るくしたのかも、役を考えるうえで参考になりました。服も大人っぽくて『初美はこういうのを着るんだ。大人になりたい憧れがあるのかな?』とか。監督さんにも『ただ親に反発している子にはしないでほしい』と言われて、話し合いながら築き上げた役でした」。
――いろいろ深く考えたんですね。役に入れば、キツイ言い方やふてくされた態度も自然に出ました?
「違和感はなかったので、やっぱり自分にもそういうところはあるんだと思いました(笑)。お父さんの話を耳に入れながら、向かい合いって聞かないでスマホをいじって逃げる。現代っ子のクセですね(笑)」。
いろいろな経験を積もうとしていたら
自分がロマンチストだと気づきました
――6話のクライマックスで、初美に重要な長台詞があります。ああいうのは練習をいっぱいやって臨むタイプですか? あるいは、現場での気持ちを大切にしたり?
「私は練習をたくさんしちゃいます。それが今の課題でもあって。自分のなかで作り上げて現場で出すものではないと思うので。相手の役者さんとのやり取りやその場の空気感を大事にしないと。だけど、私は心配性で不安になるので、作っていきたくなっちゃうんです。それは演技にマイナスな部分があって、一人よがりになったりもするので、現場で直していきたいと思います」。
――心配性は普段でも出るんですか?
「旅行に行く前とか、キャリーケースを何度も何度も確認しちゃいますね。チェックリストを自分で作って『これ入れた、入れてない、入れた……』とかやって(笑)。お仕事の集合時間にも一回場所を見てから行くので、近くのカフェで時間を潰したりしています」。
――その台詞は結局、気持ちが入って言えたんですか?
「そうですね。監督さんに『芯の強い子だから』って大事なことだけ言われて、それを胸に。初美の不器用さは、反発しているお父さんから受け継いだと思ったんです。その前のシーンでお父さんが不器用さから一歩踏み出した姿を思い出して、『私も伝えなきゃ』という気持ちになりました。自分のひと言で親がどうなるかわからない怖さもありましたけど」。
――松岡さんとは現場で話もできました?
「初めてご一緒したのが、そのクライマックスのシーンだったんです。私は緊張で顔が固まっちゃいそうだったのを、松岡さんがたくさん話し掛けてくれて緊張をほぐしてもらいました。本番直前まで。松岡さんも長台詞があって、私が言うことじゃないけど『大丈夫なのかな?』と思ってたんです。そしたら本番5秒前に目を閉じて、4、3、2、1……で目を開けてバーッと話されて。それが初美としてもハッとなったし、女優としてもスイッチの切り替えがすごいと刺激を受けました。経験の浅い私が間近でそのすごさに触れられたのはうれしかったです。台詞では松岡さんに『何あんた?』とか言ってましたけど(笑)」。
――水族館には普段は行くことはあります?
「あまり行かないので、撮影で行けて良かったです。待ち時間もけっこうあったから、いろいろなお魚を見てました。名前は忘れちゃったんですけど、水のなかでずっと横になっている魚がいたんですね。ずっと見ていても動かなくて、撮影が終わって帰ってきてもそのまま。『魚って何が楽しくて生きているんだろう?』とずっと考えてました(笑)」。
――じゃあ、優衣さんが休みの日に行くのは、どんなところ?
「基本的に外に出たがるので、何も予定がなくても出掛けます。最近はデパ地下が好きで、食べ物を見てます。『この食材とこの食材を合わせたら、こんな感じになるんだ』とか。私、料理はあまりできないんですけど。特にお惣菜を見るのが好きで、『誰が作っているんだろう?』『朝から大変だろうな』とか思いながら、勝手に食べた気になって、結局何も買わないことが多いです(笑)」。
――今回「水族館ガール」に出演したことは、優衣さんにとって大きかったのでは?
「決まったときは、まず『NHKだ』と思いました。日本のどこでも観られるじゃないですか。そこに出られるのはうれしかったし、プレッシャーもありました」。
――遠くの親戚の方とかにも観てもらえそう?
「親が広めているらしくて、直接電話が来ます。最近は『世界ふしぎ発見!』にも出させていただいて、ツイッターのフォロワー数もだんだん増えて、リプで『観てます』とか目に見える応援をいただくので、励みになりますね。前は自分が楽しいからやっている面も多かったんですけど、私を観てくださってる方がいると思うと、『この方たちのために何か私にできることはないか?』『私は観ている方にどんな影響を与えることができるのか?』とすごく考えるようになりました」。
――早くヒロイン級の役をやりたい気持ちもあります?
「機会があればやらせていただきたいですけど、まだ自分に足りないものがたくさんあるのを、今すごく感じるので。それを1コずつ潰していきたいです」。
――9月には17歳になりますが、焦りはない感じ?
「前のほうが焦ってました。同世代の方が出てきたのを見ると刺激を受けて、夜寝る前にいろいろ思い出すんです。『あの女優さん、いろいろ出ていていいなぁ……』とか。でも、やっぱり今の私は焦るレベルにも達してないので。もっと自分を磨くことが大切なのかなと思います」。
――自分を磨くうえで、差し当たって目標にしていることは何ですか?
「いろいろな経験をしていくことが大事だと思うんです。今まで興味なかったことにも、一度は触れるようにしています。それで美術館に行ったり、いろいろやっていて。最近だとプラネタリウムに行きました」。
――ロマンチストですね。
「私、意外とロマンチストだったんです(笑)。プラネタリウムは一緒に行った友だちは途中で寝ちゃってましたけど、私はすごく楽しくて」。
――なるほど。今日の取材は優衣さんの外見のイメージ通りの思慮深さと、ギャップのある明るさに触れられて面白かったです。
「見た目と違うとはよく言われます。『しゃべらなければ大人っぽいのに、なんでしゃべるの?』とか(笑)。でも、私のことを知ってもらうと、だいたい『明るいね』とか『うるさい』とか言われます。『顔がうるさい』とかも(笑)」。
――それだけに幅広い役がやれそうで。
「役のことを深く考えつつ、やっていきます」。
北村優衣(きたむら・ゆい)
生年月日:1999年9月10日(16歳)
出身地:神奈川県
血液型:O型
【CHECK IT】
2013年に「レプロ次世代スターオーディション」に合格。金曜プレステージ「光る崖」(フジテレビ系)で女優デビュー。2016年になり、映画「黒崎くんの言いなりになんてならない」、TEE「恋のはじまり」PV(山田孝之監督)などのほか、「日立 世界ふしぎ発見!」(TBS系)や「ワイドナショー」(フジテレビ系)の“ワイドナ高校生”などバラエティでも注目を集める。ドラマ10「水族館ガール」(NHK)に8月26日(金)放送の第6話から出演。
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