PICK UP ACTRESS 黒澤美澪奈
PHOTO＝河野英喜 INTERVIEW＝斉藤貴志
さくら学院卒業から2年で17歳に
舞台「暗くなるまで待って」に出演
――去年の思い出はどんなことがありますか？
「1月の初旬に舞台『メタ桃（Metal Opera ミレニアム桃太郎）』がありました。そこから1年後に『暗くなるまで待って』に出演させていただくのですが、その間に歌やお芝居のレッスンをたくさん受けて、スキルアップの1年になったかと思います」。
――「暗くなるまで待って」で成果が見られそうですね。学校とかでは何かありました？
「好きなアニメについて語り合う部活を立ち上げて、部長になりました」。
――おーっ。ちゃんとした学校公認の部活ですか？
「そうです。高校に入ってから同じ趣味の友だちがたくさんできたので立ち上げたんです」。
――去年、お気に入りのアニメはできました？
「私は前にやっていたアニメを、ちょっと乗り遅れて観始めました。もともと『おそ松さん』が好きだったんですけど、部活を一緒に作った友だちに『文スト（文豪ストレイドッグス）』や『ヒロアカ（僕のヒーローアカデミア）』を教えてもらって、いろいろ幅広く観ています。『ヒロアカ』はちょうど3期もやってましたね」。
――放課後に原宿で遊んだりはしないんですか？
「そういう典型的なJKではないです(笑)。みんなはインスタとかTik Tokとかをやっているのですが、私はそういうのも全然やりません。自分のアカウントも持ってなくて、SNSには疎いです」。
――何にせよ、さくら学院をやっていた中学時代とは、だいぶ生活は変わったでしょうね。
「変わりましたね。中学の頃はさくら学院と勉強でいっぱいいっぱいでしたけど、自由な時間が増えたので、お母さんと買い物に行ったり、いろいろなことに没頭できるようになりました」。
――たまにまた踊りたくなったりはしません？
「します。後輩たちのライブを観たあとに『踊りたいな』と思って、家で1人ライブを開催してます。お母さんに『うるさいよ！』と言われますけど、やめません(笑)」。
――舞台に関しては、さくら学院を卒業した一昨年に主演した「ミレニアム桃太郎」が初めてでしたっけ？
「本当の最初の舞台経験というと、本格的な舞台ではないですけど、2012年から14年に『大！天才てれびくん』にレギュラーで出させていただいていたときの公開収録です。そこでお芝居をしたり歌ったりして、目の前にお客さんがいて反応がすぐ返ってくるのがすごく楽しいと思い始めました」。
――最初から「楽しい」という感覚が強かったんですか？ 目の前でお客さんに見られていることが、プレッシャーになったりはしませんでした？
「それはなかったです。2016年の夏にさくら学院でやった『秋桜学園合唱部』でも舞台の楽しさを再確認して、『これからもやっていきたいな』と思いました」。
――じゃあ、「ミレニアム桃太郎」も楽しくできたわけですか？
「いえ、さくら学院を卒業して、いきなり座長という立場だったし、殺陣も初めてだったので、結構いろいろ悩みました。他のキャストの方は殺陣の経験者ですが、自分だけ何もできない状態で入ったので、不安はたくさんありましたけど、その分、周りの方が支えてくださって、何とか頑張ることができたので良かったです」。
――去年の「メタ桃」も含めて、特に印象深い公演はありますか？
「舞台は1回1回、同じには絶対なりませんけど、『メタ桃』でお客さんが連れていた赤ちゃんが泣いてしまったときがあったんです。そこで『怖いよね～』とアドリブを入れたら、他の演者さんも乗ってくれたんです。お客さんも巻き込んで作れる舞台っていいなと、改めて感じました」。
――そうしたハプニングを楽しめることも含めて、美澪奈さんは舞台に向いているんでしょうね。
「お客さんとの掛け合いは本当に楽しいし、体と顔で表現する舞台は、私にとってかけがえのないものです」。
――オードリー・ヘップバーン主演の映画でも知られる「暗くなるまで待って」では、「ミレニアム桃太郎（シリーズ）」とは違う気構えがあるのでは？
「ありますね。『ミレ桃』はさくら学院の“公開授業”のイベントから、講師の方が『一緒にやってみない？』と誘ってくださってできた舞台だったので、アットホームな感じだったし、伸び伸びやらせてもらいました。今回は役者さんも演出家さんも初めての方たちなので、稽古がどういう雰囲気で進んでいくのか、ちょっと不安な部分もありました。でもドキドキ、ワクワクもしています」。
――この取材日時点では稽古に入る前とのことですが、作品に対する予備知識はあったんですか？
「お話をいただく前はまったく知りませんでした。台本をいただいて読んでいても、最初は文字だけだとよく理解できないところがありました」。
――確かに、盲目の若妻のアパートのどこかにある麻薬が仕込まれた人形を、悪党3人組が手に入れようとする心理戦は、台本だけだとわかりにくいかもしれませんね。
「熟読して『こういう感じかな？ 結構怖いだろうな』とわかってきてから映画を観てみたら、めちゃくちゃスリラーでした。自分的にはかなり衝撃を受けたので、『これが舞台で織り成されたらどうなるんだろう？』と想像するのが楽しいです」。
――もともとは舞台を映画化したそうですね。
「映画より先に舞台があったらしいです。そこは調べました」。
子どもの役は見た目は大丈夫なので(笑)
サスペンスの中で癒しの部分になりたいです
――美澪奈さんが演じるグローリアは、盲目のスージーに協力して助ける役どころですが、今回の台本では映画のグローリアと近いイメージですか？
「基本的には映画のグローリアちゃんが元になっているようです。稽古に入って、どうなるかはわかりませんけど、私なりに色を付けられたらいいかなと思っています」。
――差し当たり、グローリアにどんな印象を受けました？
「いたずらっ子というか、小生意気な感じがしました。でも、ちょっと陰もある女の子です。家庭でいろいろあって、お父さんがいなかったり、お母さんも仕事で家を空けていたりするので、寂しいだろうけど、それを表に出さないように頑張っています。アパートの下の階に住むサムのことが好きで、奥さんのスージーに嫉妬するかわいい部分もありますね。典型的な“子ども”という感じです」。
――あまり自分っぽい感じはしません？
「そうですね。共通点としては、年上の男性に憧れるところは、ちょっと似てるかもしれません」。
――おっ。意味深な発言(笑)？
「私も福山（雅治）さんとか、結構年上の方が好きなので。でも、グローリアちゃんはやっぱり子どもだと思うところがあって、そこは自分と離れているから、どう近づけられるか頑張りたいです。映画の感じだとかなり賢い気もするので、そこも出していきたいです」。
――さっき出た自分なりの色付けは、どんなところでします？
「ベースはあのグローリアですけど、感情の起伏もしっかり出す感じにしたいと思っています。暗めというより元気な女の子だと印象付けて、サスペンスの中で癒しの部分になれたらというのもあります」。
――課題になりそうだと思うことは？
「映画よりは年齢を上げると聞いてますけど、自分より年下の子なので、やっぱりどう子どもっぽく見せるかは研究しなきゃと思います。見た目的に身長は大丈夫そうなので(笑)、『頑張って子どもを演じている』みたいな感じではなく、普通に『子役が出てきた』と見ていただけるようにしたいです」。
――演じるのが楽しみなシーンはありますか？
「グローリアとスージーのやり取りはすごく楽しみです。会話って目を合わせてすることが多いですけど、相手が盲目の女性だと目はしっかり合わないと思うんです。スージー役の凰稀（かなめ）さんは本当に目が見えないわけではないので、どう演じてこられるかも楽しみですし、それに対して私がどう反応できるか。自分の演技の腕にもかかってくるので、頑張りたいと思います」。
――そもそも今回のグローリア役は、オーディションとかがあって決まったんですか？
「プロデューサーさんに『会ってみたい』と言われまして、いろいろお話させていただいて、『じゃあグローリア役で』という形でした」。
――自分が選ばれた理由として、思い当たる節はありますか？
「見た目が子どもっぽい(笑)。一番はそこかなと思います。周りの同い年の子はみんな大人っぽいし、高校生でこの身長（152㎝）って少ないほうだと思うので、小さい子を演じられるのはある意味、武器ですよね。自分の幅を広げる意味でも、良い役をいただきました」。
――身長が伸びてほしいという気持ちはあるんですか？
「せめて155㎝くらいは行きたかったんですけど、3～4㎝足りないですね。もう諦めました(笑)。結構頑張ったんです。骨に刺激を与えるといいと聞いて縄跳びをしたり、牛乳を毎日飲んだり……。でも、限界でしたね(笑)」。
――女優としては個性になると思います。舞台は出演が決まった時点から、気持ちが引き締まったり、生活のルーティンが変わったりもするもの？
「今回は8月に決まったので『1月まで長いな』と思っていたら、あっという間に来てしまいました(笑)。その間に、子どもっぽく見えるには華奢なほうがいいと思って、体力作りを兼ねてシェイプアップをしました。毎晩10km、雨が降らない限り走ったり、自分でできる筋トレとかをいろいろやってました。成果はちょっとずつ出始めていると思います(笑)」。
――毎晩10kmですか……。もともと太っていたわけではない美澪奈さんが、シェイプアップするのは大変そう。
「もっと仕上げられたらと思います。舞台は体力勝負なところもあって、体調が少しでも違うと調子が狂うので、体重と体調の管理は大事にしていきたいです」。
――ちなみに、美澪奈さんは暗いのは大丈夫ですか？
「大丈夫です。小さい頃は灯りがついてないと眠れなかったんですけど、今はついていても暗いところでも寝られます。むしろ暗いところと狭いところは好きです(笑)。おばけが出るとかがなければ、大丈夫だと思います」。
――おばけはそんなに出ないと思います(笑)。この舞台からスタートする今年、力を入れていきたいことは何ですか？
「舞台関係だと、前の『メタ桃』が生バンドで歌うミュージカルチックでアクションもあって、今回はストレートプレイをやらせていただくので、また新たなジャンルにも挑戦したいです。2.5次元の舞台とかをやってみたいですね。あとは役者としてもっと幅を広げたいので、声優さんとか朗読劇とかナレーションとか、体と顔を使わず声だけで表現するお仕事もできたらいいなと思います」。
――映像系はどうですか？
「基本的には舞台や声の方面の活動をもっと進められたらと思いますけど、チャンスをいただけるなら、ドラマやテレビにも挑戦したいです」。
――バラエティも向いているんじゃないですか？
「確かにバラエティは好きです。もっと話せる場はほしいですね。基本的にずっとしゃべっているタイプで、よく『うるさい』と言われますけど(笑)、夢としては自分でいろいろ言えるようなトーク番組にも出てみたいですね」。
――4月からラストJKになりますが……。
「今もJKとしていろいろ楽しんでますけど、それこそタピオカを食べに行ったり、プリクラを撮りに行ったり、もっとJKらしいこともJK中にやりたいかなと思っています」。
黒澤美澪奈（くろさわ・みれな）
生年月日：2001年5月22日（17歳）
出身地：東京都
血液型：AB型
【CHECK IT】
子役としてデビューし、2012年度～2013年度に「大!天才てれびくん」（NHK Eテレ）にレギュラー出演。2015年5月から2017年3月まで成長期限定ユニット「さくら学院」で活動。「サンリオキャラクターズ ポンポンジャンプ！」（BSフジ）で主題歌を担当。女優として舞台「ミレニアム桃太郎」、「Metal Opera ミレニアム桃太郎」に主演。舞台「暗くなるまで待って」は1月25日（金）～2月3日（日）サンシャイン劇場で上演。以降、地方公演も開催。
詳しい情報は公式HPへ
舞台「暗くなるまで待って」
作／フレデリック・ノット 演出／深作健太
1月25日（金）～2月3日（日）サンシャイン劇場
2月8日（金）～10日（日）兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2月16日（土）、17日（日）ウインクあいち
2月23日（土）福岡市民会館 大ホール
詳しい情報は舞台「暗くなるまで待って」公式HPへ
